グランドワーク×競走馬(自分自身をみることの大切さ)

 

 

グランドワークの競走馬における有効性

 ナチュラルホースマンシップの考え方を取り入れて、競走馬と接していくなかでの個人的な感想をまとめたいと思います。


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 ナチュラルホースマンシップは、hiroyuki mochida horsemanship centerでの研修や、以前勤めていた牧場での月1回の持田さんの講習で、勉強させて頂きました。

 

 馬のナチュラルなバランスを大切にしながら、人と馬が安全に関係性をつくっていけるよう、「考え方」を学びました。それは、人目線ではなく、馬目線でのコミュニケーションです。まだまだ持田さんには力及ばずで、拙い点ばかりですが、実践した感想を述べたいと思います。

 

 

 

人から出るエネルギーを感じることができる

 

 現在、専門学校で現役の競走馬の乗り方だけではなく、グランドワークや調馬索の考え方と方法を伝えています。生徒さんたちの立ち姿(姿勢)や無意識に出ているエネルギーによって馬の動きが変わるのを見れば見るほど、ああ、やっぱり馬って人が感じにくくなっているエネルギーを感じているんだなと確信に変わっていきました。

 

 私自身も、持田さんに言われたのが、「おへそから出ているエネルギーが強すぎる」ということです。持田さんのクラブの馬で、グランドワークをしようとしたら、まだ何もしていないのに、馬の真正面に立っただけで、馬が後ずさりしてしまいました。私の姿勢や「よし、やるぞ!」という気持ちが馬からすると強すぎるエネルギーだったので、後ろに下がってしまったのです。持田さんのアドバイス通り、おへそを隠すように、また、肩をすぼめるようにすると馬が後ずさりしませんでした。

 

 色々な生徒さんを見ていると、彼彼女らの普段の姿勢や態度が、馬に影響しているのが分かります。本人は気づいていない姿勢やエネルギーや息遣い、それらを私は本人たちに鏡をむけるように、伝えて、改善してもらいます。競走馬なので、乗馬よりも人の指示に対して敏感に反応します(というより敏感に反応するように調教しています)。グランドワークで円運動中にまったく常歩せずに慌てて速歩になってしまう馬に対して、生徒さんが深呼吸し、肩をすぼめるだけで、馬が頸を下げて常歩をしたということも実際に何度もあります。

 

 このように、グランドワークでは、生徒さんたちに馬と接しながら自身の所作や姿勢に意識を向け、馬への不必要なエネルギーを出さないように心掛けをさせています。それができてやっと馬の調教ができると確信しています。

 

 しかし、これは、馬が人に一目を置いている状態で成り立ちます。馬が人をリーダーとして意識していないときほど怖いことはありません。

 

 

 

馬:「わたしの言葉が通じた!」

 

 馬が「人に一目を置くこと」を、わたしは馬が人に対して「自分の言葉が通じる人だ」と認識することと勝手に解釈しています。持田さんに教わった、馬に一目を置かせる方法は、馬の言葉で「私がリーダーだよ」と伝えることです。そして、今までそういったアプローチをされなかった馬は、一目を置かせるアプローチをすると「キョトン」という顔をしていて、それがどうにも「なんで馬の会話がこの人できるの!?」みたいに私は感じています。

 

 例えば今まで、スペイン語しか話せないのに、永遠と日本語で話しかけられ、通じないから無理やり手を引っ張られたり、押されたりされている人がいたとします。その人にスペイン語で話しかけると、その人は驚きながらも「ほっ」っと安心し、ついていきたくなる、、それが一目を置くということと考えています。馬の人に対する心の状態(安心)が、とても重要だと思っています。

 競走馬は、厳しい調教にも応えなければなりません。そこで根本に人に対する「安心」があれば、日々の調教に前向きに挑める強い精神を馬がもてるのだと感じます。

 

 

 

精神状態(メンタル)の重要性

 

 競馬場で働いたときの話ですが、自分の担当馬が勝ったときに調教師に、「馬の精神状態を前向きにもっていけたから、最後、馬が伸びて勝てたんだよ」とおっしゃって頂いたことがあります。またJRAのとあるジョッキーのマネージャーさんの方とお話する機会があり、「できる(馬をレースで勝たす)厩務員ってどんな人だと思いますか」と尋ねると、「絶対にメンタル、レースに向けて馬のメンタル管理ができる人」とお答えくださいました。

 

 人でも、アスリート選手はメンタルトレーニングを取り入れているように、アスリートである競走馬にとってもやはりメンタルが重要なのだと感じますが、それはなぜでしょうか。『スポーツメンタルトレーニング教本 三訂版』によると、実力発揮には心理状態が深く関係しており、とくに「緊張や興奮のレベル」のコントロールが重要といいます。緊張や興奮のレベルが高すぎても低すぎてもパフォーマンスは低下します。緊張や興奮が高すぎれば力みや焦り、注意散漫などにつながり、反対にそれらが弱すぎるとボーっとしたり、集中できなくなったります。

 これは人間の話ですが、馬でも同じことが言えるのではないでしょうか。興奮しているだけで、内側からのパワーが出ず空元気の馬、鈍いといわれている馬、それぞれ個々の馬に対して、適切なメンタルのコントロールを軸に調教を行っていき、「緊張と興奮のレベル」をその馬の最大の実力を発揮させるレベルでレースに向かわせるのが重要なポイントなのだと感じます。

 

 

 

馬をよくするにはまずは自分自身から

 

 上記のことは、長年、馬を扱ってきている人からすれば、当たり前にやっていることだと思います。そして、当たり前にできている人は精神状態が安定しているなと色んな人をみてきて感じています。馬にイライラなんてしている人は論外です。また意気込みすぎている人も馬からしたマイナスのプレッシャーです(最初の私のエネルギーが強すぎる話)。    ですから、自分自身の精神状態のゼロポイントを知り、そのときの身体の所作を覚えておく必要があります。精神状態と体の所作が関係しているのは日常で容易に感じることができると思うのですが、精神状態というよりも私は潜在意識(人からでる波動)と身体の所作の関係と感じています。つまり自分の精神が「リラックス」していると脳で思っていても潜在意識から「リラックス」していなければ、身体所作は「アンリラックス」です。そして馬はその人の身体所作、もしくは潜在意識をみていると考えると、人はそこから改善しなければならないと結論づけることができます。

 人が「今自分はリラックスしています」と言ったとしても、それは脳が実際にそう思っているだけで、身体所作は、胸を張って、肩で呼吸をしている状態だと、本人も気づかないところ(潜在意識)で緊張していしています。そういった人は最初に記したとおり、呼吸法や姿勢などの身体所作の改善をして潜在意識へのアプローチができるのではないかと思います。そして、これは馬に接するときだけではなく、日常生活から意識する必要があり、それによる変化は大きいと思います。

 

 実際に感じた経験をお話します。現在「馬カウンセリング」をおこなっております。それは、馬と接してもらいながら日々の悩みなどの相談を受けるという、精神科よりももっと敷居の低い相談場所を提供です。そこでのある人の話。その人が馬と接しているとき、どうにも馬が落ち着きません。指示を出しても、馬はどことなく慌てるような感じ。しかしその人に呼吸や姿勢を改善していただくと馬にも良い変化がありました。本人にもそれを実感していただき、日常でもその姿勢と呼吸を実践してもらいました。すると次のセッションでその人が現れた時、私は別人かと思いました。それぐらいオーラがポジティブに変わっていたのです。別例では、新馬の調教中、調教している人が強張った顔をしており、私は彼女に笑顔になってとアドバイスしました。すると新馬の調教がとてもスムーズにすすみ、それは本人も実感していました。そういった経験が何度もあるなかで、姿勢や呼吸は潜在意識と深く関係しているのだなと確信しています。正直、潜在意識よりももっと次元の違うところでリンクしているのかもしれませんが、そこまで私は感じ切れていません。

 

 

 

身をもって実践し、その自分自身を見ることの大切さ

 

 グランドワークに限らず、騎乗でもそうですが、自分の呼吸法や姿勢を変えることによって潜在意識を変え、精神のゼロポイントを作ってから、調教に入ることは大切であるなと実感しています。そのために、持田さんやそういった道の方に、馬に接するときの自分自身を見てもらいアドバイスをもらうことは絶対にやってもらったほうがいいと感じます。馬との会話の「考え方」を知っただけでは、足りないかと思います。まず実践し、実践しているところを見てもらう、もしくは動画で撮って分析する、までおこなわないと改善されえないと考えます。

 

 

 

競走馬に対するグランドワークの実践結果

 

 ここから記すのは、馬にグランドワークをおこない、そのあと馬がどう変化したかです。科学的なデータはなく、ただ馬の状態がどうなったかだけを記します。

 

 

 

・馬房で馬が人に対してお尻をむけて蹴ろうとする、立ち上がる

 

→馬房で、人に一目を置かせる

 

結果:次の日から人が馬房に入っても馬は頸を下げたまま(リラックス)、人を蹴ろうとはしてこなくなり、ひき馬も扱いしやすくなった。

 

 

 

・右前の屈腱が痛むことが多い

 

→円運動時に、馬のナチュラルバランスを左後ろにバッグさせる

 

結果:右前にバランスが倒れて走ることが、アプローチなし、もしくは少しのアプローチでなくなり、強い調教しても右前は疲れず痛まなくなった。

 

 

 

・ひき馬時、ずっとテンションが高い

 

→ひき馬時の人と馬とのポジションを馬に理解してもらう

 

結果:馬が頸をさげて歩き、人が止まれば止まり、前へすすめと思うだけで進む。(その馬の繊細さのおかげで人の内面をあげるだけで馬がそれを感じてリラックスした状態で前にすすむことを選ぶ)

 

 

 

・騎乗やひき馬で鈍い馬

 

→ゼッコで後ろ脚(もっと言えば後ろ脚を動かす神経)を働かせる

 

結果:この馬は敏感な馬だ、と人から言われるようになる

 

 

 

・ひき馬時、他馬に馬っ気を出す

 

→リバティをして人への一目を置かせる

 

結果:ひき馬時、馬っけを出して立ち上がることがなくなった。(完全ではなく、ひく人によって少し態度が変わる)。また競馬場で先頭で調教できなかったのが、できるようになったとの調教師からの報告もありました。

 

 

 

・洗い場や馬房で、肩から人にもたれてくる

 

→円運動でもその肩が全く動かないので、人の指先のコマンドで馬の肩が人が立っている反対方向に移動するように理解をしてもらう

 

結果:調馬索で片方の手前が全くでなかったが、誰が触ってもできるようになった。体重心を人にもたれかけることがなくなった。

 

 

 

・人を噛む馬

 

→人と馬との適切なスペースを理解させる

 

結果:噛むというより、人のスペースに勝手に入ってこなくなった。

 

 

 

 はい、まだまだあるのですが、基本的に馬も人も安全に調教できるようになります。これにより、女性の力でも競走馬をグランドで扱うことができます。力ではなく、会話力だと感じます。

 

 

 

 

 

 

 

以上、まとめです。

 

 ただただ、アウトプットさせてもらいました。荒い文章で、勝手な思い込みも含まれていますが、読んで頂きありがとうございます。

 

 

 

 もっともっと丁寧に馬や人との会話を掘り下げていく所存です。

 

 今まで関わってくださった人や馬には「感謝」しかありません。みなさまからいただいた贈り物ををしっかりと自分のものにし、世の中に還元できるよう、学び続けます。

 

 

 

Umanotonari  伊東伶