馬にエサを使った調教が必要なときとは

youtube にも載せていますが、ブログでも書こうと思います。

 

ある乗馬クラブでの悪い体質が降りかかってしまったある馬と、その子を引き取ったオーナーさん。

 

乗馬クラブを転々とし、そこでのスタッフには扱いきれない自分を棚に上げて、「バカな馬だ」と陰で暴言を吐かれる始末。

 

愛情のない調教に耐えた馬と、スタッフにそんなことを言われても、この馬を手放さなかったオーナーさんの心のタフさに、感銘。

 

私が調教させてもらうようになって、その馬が暴言を吐かれるような馬ではなく、「とても頭がいい馬」だとわかりました。

暴言を吐く人は、自分に向かって言っているのと同じなんだなあと深く納得しました。

 

馬を調教する時、内面(精神面)を使います。内面をオフ(リラックスor息を吐く)すると、馬にご褒美を与えることができ、馬が納得し、リラックスします。

 

しかし、この馬は、私の内面を知らんぷりします。

「人の指示(恐怖)から逃げる(放馬)=道草できる等のご褒美がある」というリンクになっていました。この馬からすると、人の内面や指示にフォーカスしたところで、なんにもいいことなんてなかったんです。

 

そして、本気を出せば、人よりも自分のほうが力が強いことも知っていました。

 

なので、まず私の内面のリリースをご褒美と認識してもらうために、エサを使いました。私は何百頭と馬と触れ合ってきていますが、ほとんどがサラブレッドで餌を必要としません。ただ、エサを使う調教はどうなんだろうと、悶々としていたときにこの馬に出会ったので、本当に運命のような、これが引き寄せの法則?なんて思ってました。

 

人の指示を聞いたあとに、エサを与えます、同時に内面オフにします。エサ=人の内面オフのリンク付けをしてもらい、エサがなくても、人の内面にフォーカスしてもらえるようになりました。

 

エサを与えるタイミングは

「調教のはじめと終わり」

「現状の課題をクリアしたとき」

のみにしています。

 

絶対に与えてはいけないタイミングは、「馬がエサを欲しそうにしているとき」です。

 

 

そして調教が進みます。

 

オーナーさんがひき馬できない、放馬する、噛むなどの問題行動ばかりだったのが、今はほとんど引っ張ること必要がないほど、馬が人をみて、オーナーさんが止まったらしっかり合わせて止まってくれます。

 

私自身は、グランドで、横足するなど、馬の身体の柔軟性と内面のコミュニケーションをとっています。また裸馬でのることもできるようになっています。もちろん引っ張らずに体重心の移動だけで止まるようになっています。

 

 

オーナーさんが言った言葉で

「初めてです、この子がこんなに褒めてもらえるのは。」が、結構きつかった。これまでの現状を察することができる重い言葉でした。

 

まだまだ調教途中ですが、しっかりと信頼を築いていけるよう毎回学びです。オーナーさんも馬とのふれあい方を考えながら実践できているのが素晴らしいと思いました。理論はわかっていても、実戦できるかどうかは別ですからね。

 

 

上手くいかなくても、何が問題で、どう解決していけばいいのか、ひたすら学ぼうとするのがホースマンだと思います。失敗したら、そのやり方が違っていたということが分かったという「成功」です。

 

多くの馬と人が心も身体もハッピーであることを祈ります。

 

 

社会人になってから馬を始めた過去の自分は、馬のことを理解せずに触っていました。ホースマンシップの先駆者である持田さんのような教え方をしてくれた人がいなかったといえば言い訳になりますね。馬のことを理解しようとせず、ただただ上手に乗りたいという気持ちしかありませんでした。本当に馬にひどいことをしていたと反省しています。忘れることなんてできません、もはや自分に対する怒りです。そんな自分みたいな人がスタッフにならないよう、馬業界のスタッフは馬のことを理解しているのが当たり前、になるよう活動しています。つまり前述の「馬に暴言を吐く人」なんて、馬業界からいなくなってほしい。特に非常勤講師をしている専門学校では未来のホースマンが沢山いるので、しっかりと伝えていければと思います。自分のことではなく、馬のことを考えて乗れば、目つきも、姿勢も、かっこよくなり、馬に乗るのがめちゃくちゃ上手になる子をたくさんみてきています。馬のことを考えれば、自分に必要な技術がおのずと見えてくるんですよね。